相続放棄申述受理証明書が必要な場合と申請方法

文責:所長 弁護士 菅沼大

最終更新日:2025年01月10日

 相続放棄をすることによって、被相続人が有していた借金などを相続する負担から逃れることができます。

 しかし、相続放棄をしたとしても、相続放棄をしたことを知らない債権者から、被相続人の借金を返済するように求められることがあります。

 そのような場合には、「相続放棄申述受理証明書」を提出することによって、相続放棄をしたということを証明することができます。

 今回は、「相続放棄申述受理証明書」が必要となるケースや申請方法などについて、わかりやすく解説します。

1 相続放棄申述受理証明書について

 相続放棄申述受理証明書とは、どのような書類で、どのような場面で必要になるのでしょうか。

 まずは、これらについて詳しく説明します。

 

⑴ 相続放棄申述受理証明書とは?

 相続放棄申述受理証明書とは、相続放棄申述事件を受理したことを家庭裁判所が証明するものです(家事事件手続法47条1項)。

 当事者または利害関係を疎明した第三者(共同相続人、後順位相続人、相続債権者など)が、申述を受理した裁判所に対して申請することができます。

 なお、相続放棄の申述が受理された場合には、申述人に対しては、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が発行されます。

 これは、相続放棄申述受理証明書のように、申請がなくても自動的に発行されるものですが、再発行をしてもらうことはできません。

 

⑵ 相続放棄申述受理証明書が必要となるケース

 相続放棄申述受理証明書が必要になるケースとしては、以下のケースが挙げられます。

 

 ① 相続登記をする場合

 被相続人の遺産に不動産が含まれている場合、不動産を相続することになった相続人は、相続登記を行うことになります。

 遺言や遺産分割協議によって不動産を取得した場合には、遺言書や遺産分割協議書を添付して相続登記を行いますが、相続放棄によって他の相続人が遺産を取得することになった場合には、相続放棄があったことを証明する書類を添付する必要があります。

 その場合利用されるのが相続放棄申述受理証明書です。

 

 ② 債権者から相続債務の返済を求められた場合

 相続が開始すると被相続人のプラスの財産だけでなく、マイナスの財産(借金など)についても相続人が相続することになります。

 マイナスの財産を相続したくない場合には、相続放棄をすることになりますが、相続放棄をしたかどうかについては、裁判所に照会をしなければ判別しないため、相続放棄をしたことを知らない債権者から相続債務の返済を求められることがあります。

 このような場合には、相続放棄申述受理証明書を債権者に提出することによって、相続放棄の事実を証明して返済を免れることができます。

 なお、多くのケースでは、相続放棄の申述が受理された場合に発行される「相続放棄受理通知書」の提示で足りますが、相続放棄受理通知書を紛失してしまったという場合には、これの再発行ができませんので、相続放棄申述受理証明書を取得する必要がります。

2 相続放棄申述受理証明書の交付申請手続き

 では、相続放棄申述受理証明書を取得するためには、どのような手続きをとる必要があるのでしょうか。

 

⑴ どの裁判所に交付手続きをすれば良い?

 相続放棄申述受理証明書の申請は、相続放棄の申述を受理した家庭裁判所に対して行います。

 相続放棄の申述は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行うことになりますので、相続放棄申述受理証明書の申請も被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。

 

⑵ 交付手続きに必要となる書類

 相続放棄申述受理証明書の交付申請に必要となる書類は、申請者が誰であるかによって異なってきます。

 以下では、申請者が申述人本人である場合と利害関係人である場合に分けて説明します。

 

 ① 申述人本人が申請する場合

 • 相続放棄申述受理証明申請書

 • 申請者の身分証明書(運転免許証、パスポートなど)

 • 申請者の認印

 • 返送用の封筒(郵送申請の場合)

 • 返送用の郵便切手(郵送申請の場合)

 ※身分証明書の記載が相続放棄の申述時の氏名および住所と異なる場合には、つながりの分かる戸籍謄本、住民票などが必要になります。

 ※裁判所によって異なる場合もあるので、詳しくは申請する裁判所に確認が必要です。

 

 ② 利害関係人が申請する場合

 申請者が利害関係人(共同相続人、後順位相続人、相続債権者など)である場合は、以下のとおりです。

 • 相続放棄申述受理証明申請書

 • 申請者の身分証明書(運転免許証、パスポートなど)

 • 資格証明書(法人の場合)

 • 利害関係疎明資料(被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本、申請者の戸籍謄本、債権者であることを証する資料など)

 • 返送用の封筒(郵送申請の場合)

 • 返送用の郵便切手(郵送申請の場合)

 ※裁判所によって異なる場合もあるので、詳しくは申請する裁判所に確認が必要です。

 

⑶ 交付手続きに必要となる費用

 相続放棄申述受理証明書の申請費用としては、証明書1通につき収入印紙150円が必要になります。

 

⑷ 申請からどのくらいで交付される?

 申述人本人が相続放棄申述受理証明書の交付を求めたときには、家庭裁判所は許可しなければならないとされていますが、利害関係を疎明した第三者が相続放棄申述受理証明書の交付を求めた場合には、家庭裁判所がこれを相当であると認めたときに交付されます。

 このような違いから、申述人本人が交付申請をした場合には1~2週間程度で交付されるのに対して、利害関係人が交付申請した場合には交付まで1か月程度要することがあります。

3 交付申請の注意点

 相続放棄申述受理証明書の交付申請をする場合には、以下の点に注意が必要です。

 

⑴ 請求期間は30年間

 裁判所の相続放棄に関する書類の保存期間は30年間とされています。そのため、相続放棄の申述を行ってから30年を経過していた場合には、相続放棄申述受理証明書の申請をしたとしても、保存期間を経過していることを理由に、証明書は交付されません。

 30年以上経過している場合には、相続債権者から問い合わせがあったとしても、時効を理由に請求を拒むことができますが、相続登記をする場合には、相続放棄申述受理証明書がないことを理由に登記ができないこともあります。

 そのため、他者の相続放棄によって結果的に不動産を取得することになった場合には、早めに相続登記を済ませるようにしましょう。

 

⑵ 交付申請には「事件番号」が必要

 相続放棄申述受理証明書の交付申請をする場合には、交付申請書に相続放棄の申述をした際の「事件番号」の記載が必要になります。

 事件番号については、相続放棄の申述が受理された際に、裁判所から交付される相続放棄申述受理通知書に記載がありますので、相続放棄申述受理通知書が手元にあれば、問題なく記入することができます。

 しかし、相続放棄申述受理通知書を紛失してしまったという場合には、事件番号がわかりませんので、裁判所に対して相続放棄の申述有無の照会をしなければなりません。

 なお、相続放棄の申述有無の照会については、手数料はかかりません。

 

⑶ 相続放棄済みの場合、他の親族の証明書を申請できない

 相続放棄の申述をした人が、自分自身の相続放棄申述受理証明書の交付申請することは問題なく行うことができます。

 しかし、既に相続放棄の申述が受理された人が、同様に相続放棄が受理された他の相続人の相続放棄申述受理証明書の交付申請をすることは、原則として認められません。

 相続放棄をすることによって、その相続については初めから相続人でなかったものとみなされることから(民法939条)、相続人としての利害関係が認められなくなるということがその理由です。

 他の相続人の相続放棄申述受理証明書が必要な場合には、他の相続人に依頼して、申述人本人として相続放棄申述受理証明書の交付申請を行ってもらうようにしてください。

4 相続放棄についてのお悩みは弁護士へ

 相続放棄の申述が受理された後も、さまざまな場面で相続放棄申述受理証明書が必要になることがあります。

 その都度交付申請をすることもできますが、手間がかかる作業ですので、相続放棄が受理された後に、少し余分に証明書を取得しておくことも良いかもしれません。

 また、相続放棄についてのお悩みの方は弁護士に相談をすることをおすすめします。

 相続放棄をするかどうかは、被相続人の負債だけでなく資産の状況を加味して判断しなければなりません。

 被相続人の相続財産をすべて把握しているのであれば問題ありませんが、通常は、どのような相続財産があるかがわからないという場合が多く、相続財産調査を行わなければ正確な資産と負債の状況が明らかになりません。

 相続放棄をするかどうかは、その後の生活にも重大な影響を与えることになりますので、正確な相続財産調査を行い、相続財産をするかどうかを適切に判断してもらうためにも、弁護士に相談をすると良いでしょう。

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